Vol.1 三進金属工業株式会社
Leaders Voice 第1回目のリーダーは、三進金属工業株式会社 代表取締役社長 新井 宏昌 氏。
1964年に創業。物流、工場、事務所、図書館等向けスチールラックメーカーとして国内最大手の完成品メーカーであり、自社で開発・設計部門を有している企業である。
コロナ禍の厳しい状況においても、右肩上がりの成長を続けられる「企業力の源」と「健康経営」について語って頂きました。
------ 三進金属工業株式会社の沿革についてお聞かせください。
我が社は、今年で55期目を迎えました。創業の地は大阪市西成区の梅南通り。3人で鉄板の加工販売していたのですが、付加価値をつけなければいけないということで、昭和39年に10坪の工場を借りて「ものづくり」を始め、三進金属工業を創業しました。
昭和42年に大阪市西成区津守に新しい工場を作り、さらにこの津守の工場を売却。昭和58年に忠岡町に移転し、棚板の生産に特化することになりました。その機械設備の生産ラインを年商分位入れて大勝負したところ、それが高度成長に伴って当たりました。オイルショック時は苦しい時もありましたが、真面目に作っている会社を潰してはいけないと、自分たちにも影響するということで、お得意先様たちが総出になって助けてくれました。昭和58年には塗装ラインを作り、昭和63年にJIS規格を取得し、ブランドメーカー様との取引も出来るようにました。その後、全国対応するまでとなり、平成元年のバブル期には東日本に向けての出荷が半分以上で本社工場と配送センターでは間に合わなくなり、福島県郡山市に工場を建設しました。
東西両工場が稼働し始めると、バブルの余韻もあり「100億企業」となりました。
また新たに、平成13年に福島県石川郡平田村に23ヘクタールの新工場を建設しました。
一番辛かった時期はリーマンショック後で、売上の30%がダウンし、非常に厳しい状況が続きました。その後の3.11東日本大震災では天を仰いで終わりかと思いましたが、震災需要の大転換があり、価格競争から納期競争になりました。東西両工場はフル回転でV字回復となり今日まできています。信じられない状況でした。
その後、世界ナンバーワンeコマース会社との取引もあり、物流システムや価格競争の影響も受け、見直しもしました。「情報はプライスレス」ですね。おかげで物流も全国規模となりました。
------ 本社移転や新工場の建設により社員も増え、「健康経営」について見つめなおすこともあったのではと思いますが、その辺りについても教えてください。
「企業の成長は社員の成長と共に」ということで、いかに人材を育てていくかがポイントです。
忠岡町に移転してきたときは、工場先行で事務所はプレハブの建物でした。女性社員もすぐ辞めてしまう始末でした。しかし、昭和60年に本社ビルを建設したことで、短大や四年制大学を卒業した女性社員も集まる企業に変わりました。
さらに女性社員の働きやすい事務所にしたいと考え、お茶やお花を習える和室も作りました。その効果もあり、女性社員の定着率は上がり、さらに口コミが広がって地元の高校卒業生の定期的な採用も増えました。人材を育てるということの大切さですね。
また、社員の資格取得も積極的に応援しています。取引先からの要望で、積層棚(中二階)といって設計構造計算が必要な製品も扱うようになりました。この製品の製造には2級建築士や1級建築士の資格が必要だということになってきました。以前、JISが必要だと取引先のお客様から言われたのと同じように。
そこで新規採用する際に、やる気があれば給料も出した上で専門学校へも通えるよと伝え、希望者には建築の専門学校の通学を支援しました。その時合格した者で、最終的に今も残ったのは2人だけです。会長(当時社長)は「それは仕方ない。世のため、人のためになるのだから 」と。いつか三進金属工業に恩返ししてくれると広い気持ちでいました。
その中の1人は、1級建築士まで取得し、今も活躍しています。
その他にも、建築専門学校の先生に週1回来ていただき、社員を集めて、毎週水曜日に2級建築士取得のための勉強会をしていた時期もありました。
これらが今日の発展になりました。人材育成への投資は大切にしています。
------ 「健康経営」に取り組むきっかけとなったことはなんですか?
SANSHIN2020チャレンジ宣言!の取り組みの際に、令和2年1月からスタートしました。
禁煙の必要性については会長の思いが強く、創業時のメンバーで重鎮だった方が、肺がんで亡くなったことが影響していると思います。タバコは以前から良くないと思っていたので、思い切ってこのように決めました。
------ 社長ご自身や社員の皆様の健康管理についてお聞かせください。
もちろんです。私自身も健康診断を受け、胃や大腸の内視鏡検査もし、メンテナスもしっかりとしています。
社員全員の健康診断管理は産業医と連携し、総務部が健康診断の結果を管理し、把握しています。
要観察ステージ4、5の人たち(受診勧奨対象者)への再健診100%を目指してフォローも行っています。
------ 健康課題に基づいた具体的目標はなんですか?
▲ DXを取り入れたリモート会議の様子(画面は福島工場から人事・総務部の白島氏)
コロナ禍での長時間残業を抑えなければいけないですが、設計部署は特に厳しく、それを緩和するためにも外部部隊として、ベトナムのハノイに「SANSHIN HANOI(三進ハノイ)」を設立し、設計事務所を構えています。現在23人が在籍していて、労力の負荷の軽減になっています。
これは10年前のベトナムの研修生入社と同時に始め、毎年一人一人地道に増やして、今日の人数を集めることができました。それは本当によかったなと思うところです。そういう形で、残業の軽減も注力してやっています。
今でいう、デジタルトランスフォーメーション(DX)も導入しています。リモートでの会議を行うことで、往復2日間もかけて移動し、1時間の会議に出席するということが無くなりました。お客様にもその辺りも了解し、納得していただいています。コロナ禍の前では、それができても、軽く扱われると思われるのでできなかったことです。
今はコロナ禍なので、お客様の方から「大阪から来ないで」と言われる状況です。
そういった面では、DXがぐっと前に進んで、厳しい部署もギリギリのところではありますが、多くの部署は緩和されつつあります。
休暇日数も、令和4年度には120日(一斉休暇5日含む)になります。
私の入社当初は60日位でしたが、今では倍になりました。売上も30億から今では200億超えですよ。休みが倍になっても、売上はそれ以上に確保できています。そこはやはり、人材が整って来たというところですね。人材の大切さがはっきりとしています。そこはこれからも力を入れて行きたいと思っています。
------ 社員への食生活の改善の取り組みについてお聞かせください。
社員食堂があり、社員の安全を確保して働けるよう健康な献立を意識しています。
特に福島工場では自分たちで自給自足しています。3~4年前から「サンシン夢ファーム」を作り、福島の新鮮な野菜を作っています。お米については「三進米」といって、令和元年10トン、令和2年30トン、令和3年には40トンを目指し頑張ろうと思っています。販売はしておらず、社員食堂で食べたり、お客様にお分けしています。
その流れは10年前から「植物工場」をやるようになって、農業のこともわかっていなくてはいけないということで始めたところもあります。
特に福島県は、3.11東日本大震災の影響で耕作放棄地が増えているので 県、農協をあわせて企業のみなさん出てきてくださいと、サポートしますよというのを宣伝されていました。
それを聞いて我々も出来るのではないかということで始めました。
また、福島工場は、平成26年(2014年)緑化推進功労者 内閣総理大臣賞をいただきました。天皇両陛下からはお言葉をいただき、最高の名誉ですね。
緑化については、会長が工場の中にずっといるとストレスがたまるので、休憩時間に緑が目に入ったほうが癒されてるでしょうという考えで、緑を植えています。それが発展して、福島工場で具現化できました。
苗を植えたのが、つながって天皇両陛下までにもお会いできるなんて夢にも思いませんでした。
------ メンタルヘルス不調者への対策はどうされていますか?
会社と、保険会社とも連携し、相談窓口を設けています。ストレスチェックを導入し、全社で行っています。そして、地元の病院との連携もとるようにしています。
------ 女性の社会進出が進んでいますが、健康維持・増進に向けた取り組みはどのようにされていますか?
ハラスメントの教育を令和3年の7月から、私どもの女性の顧問弁護士が得意ということで、オンライン会議システムを使って、管理職・係長・主任・総合職など階層別に各2時間行っています。内容は現場で起こりそうな事例を中心にしています。
また、女性特有の悩みや病気についての教育セミナーを9月に予定しています。女性が安心して働ける職場環境づくりに取り組んでいます。
------ 「健康経営」を取り入れることによって期待する効果は?
▲ 社員の健康への思いを語る新井社長
社員がはつらつとしてやる気を持って働ける環境を作りたいですし、維持していきたいです。
「会社に行きたい!元気になれる!」といった工夫をこれからもしていかなければと思っています。社員の満足度の向上、労働生産上の向上、事業の向上、とそれぞれ繋がっていきますよね。
三進金属工業は働きやすい会社だよという口コミや企業のイメージによって、工場について地元での採用を増やしたいと思います。福島工場は過疎地なので、特に力を入れていきたいと思っています。
また、我が社で取り入れているスカウト型の採用でも、優秀な人材も確保していきたいですね。
------ 最後に「健康経営」について今持っている課題や、今後の取り組みや、推していきたいところはありますか?
我が社のものづくりにおいては、人を大切にするというところがベースにあります。
その中で、ルーティンワークにおいてはなるべく機械化していきたいと思っています。創造性のある働き方が現場でも出来るようにということが、今後のターゲットではあります。
特に福島工場の過疎化は逃れられないので、人に対してはやりがいを重視するとともに、機械の保全、改善改良し、形を生む働きに従事してもらえるようにと頑張りたいです。
2021.8.17
会社概要
商号/三進金属工業株式会社 HPはこちら | |
資本金/3,829万円 | |
代表者/代表取締役社長 新井宏昌 | |
創業/昭和39年11月 | |
設立/昭和42年4月 | |
年商/225億円(令和2年9月) | |
在籍人数/661名(令和2年2月1日現在) | |
住所/〒595-0814 大阪府泉北郡忠岡町新浜2丁目5番20号 |